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良質で豊富な情報が作家をつくる 《「思いが伝わる文章技術」Vol.1》
文章能力を向上させる秘訣
文章を書く上で大切なことは、「本を読まない作家はいない」ということです。やはり、本を読まなくては始まりません。
他の人の本をたくさん読んだからといって、自分のオリジナリティが失われるということはありません。それは、人間が牛肉を食べても牛にはならないのと一緒です。本を読んで、そこから様々なことを吸収したとしても、オリジナルのものは出てきますので、安心してください。本はたくさん読めば読むほどよいのです。
例えば、作家の赤川次郎氏は、年間1000冊の小説を読んでいますし、『火星年代記』で有名なSF作家のレイ・ブラッドベリ氏は、12歳の頃から毎日、短編小説と詩、エッセイを1作品ずつ読み続けていたそうです。
また、夏目漱石は「予の知識を育てたのは、予の周囲に積まれた書からである」という言葉を残しています。そうして本を読んで得た知識から様々な作品が生まれ、現在でも『夏目漱石全集』として残っています。
さらに、吉田松陰先生は、安政3年の1年間で550冊もの本を読まれ、しかも大事なところをすべて書き写しておられました。
情報を武器にして、よい文章を書く
幸福の科学出版の月刊「ザ・リバティ」1997年5月号に、「ヘルメスの成功方程式」(注)という記事があり、成功方程式として7つの項目が紹介されています。その一つに、「情報を最大の武器とせよ」という項目がありました。
私は本を読んだ時、自分が「いいな」と思ったところ、赤線を引きたくなったところを、ルーズリーフにそのまま書き写しています。1冊当たり3行でもいいのですが、本の題名と情報、大事なところを抜き出して書き、あいうえお順にファイリングして本棚に並べ、時々読み返しているのです。
この「情報ファイル」が役立ったのは、以前、幸福の科学ユートピア文学賞に「景山民夫の預言~作家たちが透視した日本の未来~」というエッセイで入選し、その作品を「ザ・リバティ」で7カ月間連載させていただいた時です。いろいろな小説のなかから、未来予測が当たっている箇所を抜粋して情報ファイルを何冊かつくっていたので、連載のネタとして毎回使っていました。
このように、自分だけの情報ファイルをつくっておくと武器として非常に役立ちます。皆さんもプロを目指すならば、本を出したり雑誌に連載したりするという目標があると思うので、ご自身に合わせた方法でネタ帳を用意しておくとよいでしょう。
受験勉強などでは、「参考書の要点を抜き書きしていくよりも、同じ参考書を5回読み直したほうがよい」ということが言われますが、一方で、本の大事なところをワープロで打ってプリントアウトしたものを持っておき、それを読み直して文章を書いていた竹内均先生のような方もいらっしゃいます。両方とも、情報収集の有効な方法です。
こうしたノート方式は、ローテクですが、すぐに手の届くところに、自分のいちばん大事な情報がそろっており、参照できるようになっているのは、何ものにもかえがたいものです。ですから、自分の机を“コックピット”のようにして、執筆スペースをつくるとよいでしょう。
(注)「ヘルメスの成功方程式」
「実績を出してこそ個性がきらめく」「情熱なくして成功なし」「情報を最大の武器とせよ」「他の人の力を生かしきる」「リスクを恐れずチャレンジせよ」「明確なビジョンが人を奮い立たせる」「本当の成功は愛に始まる」の7つの項目が紹介された。
加賀義(かが・ただし)
1968年生まれ。長崎大学教育学部卒。現在、長崎県内の高校で国語教師を務めている。エッセイ「景山民夫の預言~作家たちが透視した日本の未来~」が「幸福の科学ユートピア文学賞2007」で入選。以来、執筆活動にも積極的に取り組んでいる。著書に、『効果的に伝える文章技術』(はまの出版)、現代語訳に福沢諭吉著『学問のすすめ』、平田篤胤著『江戸の霊界探訪録』、幸田露伴著『二宮尊徳に学ぶ成功哲学』(幸福の科学出版)がある。
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