ユートピア文学賞 小説・エッセイの書き方 文章の書き方講座

小説の魅力は、「未来を見せられること」 《「思いが伝わる文章技術」Vol.4》

 

読者を作品世界に引き込むストーリー構成

最後に、ユートピア文学賞のなかで「景山民夫賞」というお名前を冠されている景山先生について話します。
景山先生は、基本的に長編小説はハッピーエンドを目指されていました。
読者は、主人公に感情移入して物語を読み進めていくうちに「同一化」していますので、読者に幸せになってもらうためには、やはりハッピーエンドがいいですね。
しかし、ストーリーの途中では、いろいろな問題で主人公を苦しませ、読者をハラハラドキドキさせています。最後に幸せにすることで、読者は作品世界にぐっと引き寄せられるのです。

 

景山民夫先生の斬新な「取材法」

また、景山先生は自分が行ったことのない場所を舞台に作品を書く時は、『地球の歩き方』などの、現地の地図が載っている本を買ってきて、それを15分くらいジーッと眺め、地図が立体映像のように浮かび上がってきたら、その通りに書いていたそうです。
実際に、その場所に行ったことがある人に聞くと、景山先生が本に書いている街の様子は、実際の様子そのものだったということでした。もしかしたら、景山先生には「遠隔透視能力」が備わっていたのかもしれません(笑)。

 

イラク戦争が起きることを予言していた景山民夫先生

私が「幸福の科学ユートピア文学賞2007」で入賞した際の作品「景山民夫の預言~作家たちが透視した日本の未来~」にも書きましたが、景山先生は「未来予知能力」もお持ちでした。
実は、大川隆法総裁製作総指揮の「ヘルメス―愛は風の如く―」という映画で、景山先生は預言者の声を当てています。これも、偶然ではないかもしれません。

 
また、景山先生は、1990年代に『リバイアサン1999』という未来小説を書いています。
そこには、2020年代の日本と1999年に起きた出来事が書かれているのですが、「1991年 第一次湾岸戦争」という言葉が登場します。実際には、湾岸戦争は1回しか起きなかったのだから、「第一次」と書いてあるのはおかしいですよね。
ところが、景山先生が1998年に亡くなった後の2003年、イラク戦争が勃発しました。このイラク戦争の別名が「第二次湾岸戦争」です。つまり、景山先生は、ご自身が亡くなる前に、「もう一度、湾岸戦争が起きる」という未来を予知されていたということになるのです。

 
ほかにも、「21世紀の日本は小学校で宗教教育がなされ、日本の国家理念が『すべての人に愛を与えよ』になり、憲法改正が実現し、自衛隊は自衛軍になっている」というような設定も登場します。これも、近年の日本の流れに合っているのではないでしょうか。
このように、小説というものには、人々をリードして、未来のビジョンを見せるという働きがあると感じます。

 

作家を志す皆様へ

最後に、作家を目指す皆様へメッセージを贈りたいと思います。

 
実力をつけるためには、この幸福の科学ユートピア文学賞に応募する、小説の書き方教室などに通う、ライターのアルバイトをする、自分で書き上げた原稿を出版社に送ってみるなど、様々な方法があります。
皆さんも、実績を一つひとつ積み重ねながら、夢を実現していってください!

(了)

 

加賀義(かが・ただし)

1968年生まれ。長崎大学教育学部卒。現在、長崎県内の高校で国語教師を務めている。エッセイ「景山民夫の預言~作家たちが透視した日本の未来~」が「幸福の科学ユートピア文学賞2007」で入選。以来、執筆活動にも積極的に取り組んでいる。著書に、『効果的に伝える文章技術』(はまの出版)、現代語訳に福沢諭吉著『学問のすすめ』、平田篤胤著『江戸の霊界探訪録』、幸田露伴著『二宮尊徳に学ぶ成功哲学』(幸福の科学出版)がある。

 

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