ユートピア文学賞 小説・エッセイの書き方 文章の書き方講座

面白い作品を生み出す、アイデア発想法 《「思いが伝わる文章技術」Vol.3》

読者に「その手があったか!」と思わせる

アイデアを得るための方法を話します。
初めて文学賞に応募する人が、「霊的な世界のことを広めたい」と思って、「主人公が事故で急に死んでしまい、霊界が本当に存在することが分かった」という内容の話を書いたとします。ただ、これだけでは練り込みが足りないものになってしまいます。

例えば、第1回景山民夫賞を受賞した「Moment」という作品のように、「亡くなって霊界に行った男が、これから生まれる我が子の魂と出会う」というふうにすると、「その手があったか!」というひねりが効いた作品になります。

また、幸福の科学ユートピア文学賞2014の入賞作品「テーセウスの猫又」であれば、幸福の科学では映画にもなっているヘルメス神の物語であっても、その戦友であるテーセウスの立場から書くというように、視点を変えることで面白く読ませる内容になっています。

 

組み合わせによるアイデア発想法

アイデアとは、考えて、考えて、考えていると出てくるものです。
「アイデアとは、一つの新しい組み合わせである」という言葉があります。

例えば、ハッチンスという人はアラームと時計を組み合わせて、目覚まし時計をつくりました。リップマンという人は消しゴムと鉛筆を組み合わせて、消しゴム付き鉛筆を発明しました。藤子・F・不二雄は未来とロボットと猫を組み合わせて、「ドラえもん」をつくりました。これらが、組み合わせによるアイデアの発明です。

何かを別の何かと組み合わせると、今までにないものが出てきます。こうしたアイデアは、ネタ帳を持ち歩いて取材したり観察したり、先述したように、本を読んで大事なところをメモにとったりしていると、たくさん出てくるようになります。

 

自分にしかない「とっておきのアイデア」を考えよう

また、映画などを観て、自分がどういうところに感動したのかを考えて、その面白さを自分なりに分析してみると、本を書く際にも活用できるようになります。
誇張して考えるということも大事です。例えば、「大きな人間が襲ってくる」というのは、「進撃の巨人」がそうです。

物事を逆転させてみるのもいいでしょう。例えば、「富豪刑事」という筒井康隆氏の小説がありますが、主人公の男性は大富豪の刑事で、金に糸目をつけずに事件を解決するという作品です。これがドラマ化された時は、主人公の富豪刑事を女優の深田恭子さんが演じていました。

「○○が、××と、▽▽する」の「○」「×」「▽」の部分に、いろいろなものを当てはめて考えていくという方法も、面白いアイデアが湧きます。例えば、「塚原卜伝が、宮本武蔵と、決闘する」など、歴史上ありえないことですが、もしもタイム・マシンがあったら……と考えて、どんな試合になるか書いてみるというのも面白いでしょう。

ほかにも、「少年または少女が、ある日突然、□□になった」という設定で考えるという発想法もあります。「ある日、少年は巨大ロボットの操縦者になった」という設定であれば、「マジンガーZ」や「ガンダム」シリーズ、「エヴァンゲリオン」などがあります。

これまでに登場したことのある作品の枠組みやパターンは参考にしてかまいません。ただし、自分の作品にしかない、独自の特徴が必要なのです。パターンは真似ていてもいいけれど、独自の工夫が作品の中核になっていないといけません。

 

(Vol.4につづく)

 

加賀義(かが・ただし)

1968年生まれ。長崎大学教育学部卒。現在、長崎県内の高校で国語教師を務めている。エッセイ「景山民夫の預言~作家たちが透視した日本の未来~」が「幸福の科学ユートピア文学賞2007」で入選。以来、執筆活動にも積極的に取り組んでいる。著書に、『効果的に伝える文章技術』(はまの出版)、現代語訳に福沢諭吉著『学問のすすめ』、平田篤胤著『江戸の霊界探訪録』、幸田露伴著『二宮尊徳に学ぶ成功哲学』(幸福の科学出版)がある。

 

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